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当事務所の無罪事例【一審無罪】

覚せい剤取締法違反、窃盗事件

事案の概要
①覚せい剤を使用、所持したという罪と②コンビニに鍵をつけた停車中の車両を盗んだという窃盗の事件。

争点
① 覚せい剤を所持、使用した事実に争いはないものの、被告人を逮捕するために捜査機関がGPS装置を被告人運転車両に取り付けて所在把握を行っていた。GPSにより位置情報を取得する行為は強制処分にあたり無令状ではできないという主張をし、その結果得られた証拠については違法収集証拠であるとして無罪主張をしていた。
② 車両の盗んだのは共犯者であるが、単独の行為であり共謀がないとして無罪主張

審理の内容
① 覚せい剤事件については、GPSを取り付けた警察官や指揮した警察官、位置情報を取得して逮捕した警察官の尋問を行った。
また警察内部でGPSを用いた捜査を行うための要領なども証拠開示を求め取り調べられた。
② 共犯者の証人尋問が主な証拠調べであった。
共犯者は警察官、検察官に対しては被告人と共謀したと供述し、1回目の証人尋問でも同様の証言をした。しかし弁護人が刑務所に面会に行くと、異なる話をし、2回目の証人尋問が行われることになり、そこでは単独でやった趣旨の証言をした。

弁護活動のポイント
GPS捜査については、警察が長い間秘密裏に行っていた。
いくつかの事件でGPS捜査の違法性が争われており、この事件の進行中平成29年3月15日に最高裁がGPS捜査は令状がなければ行うことができない強制処分に当たるという判断をした。
しかしながら最高裁判例となった事件もGPS捜査が違法であると判示したものの有罪判決であった。捜査が違法でもその結果得られた証拠かどうか、それ以外にも証拠があるか、など様々な事情により違法収集証拠として排除され無罪となるかどうかが判断されることになる。
この事件の判決時点でも、GPS捜査の違法によって証拠が排除され無罪となった事例はまだ存在していなかった。
そのため、GPSによる位置情報を取得したからこそ、被告人を逮捕でき覚せい剤を押収し、尿の押収もできたこと、裏を返せばGPSがなければ押収できなかったことに力点を置いた。

判決の内容
① 本件のGPS捜査は、被告人の使用車両に約半年間合計70台が間取り付けられ、継続的に位置情報を取得していたもので、被告人のプライバシーを大きく侵害するものであった。捜査機関はGPS捜査にあたり令状請求を検討した形跡もなく、GPS捜査にかんんする捜査メモを廃棄するなど、警察組織全体で秘密の徹底を図り司法審査を経ることを困難にし、令状主義を軽視する姿勢が見られ、違法の程度は重大なものである。
本件GPS捜査は、被告人の所在確認及び身柄の確保のために行われ、それを直接利用して覚せい剤と尿を押収しており密接に関連性を有する。将来における違法捜査抑制の見地から証拠として許容することが相当でなく排除する。その結果、覚せい剤の使用及び所持の事実については犯罪の証明がないことになり無罪とする。
② 共犯者は重要な部分で法廷での証言を変遷させており信用できず、事前共謀も現場共謀も認められず、窃盗については無罪とする。

判決日
平成29年5月30日

その他備考
第1審で確定。
被告人の逮捕時に、警察官がけん銃を使用しており、けん銃使用の違法性についても争われ、この点についても弁護側の主張が認められた。