03-5614-7690
お問い合わせ 24時間対応

当事務所の無罪事例【一審無罪】

詐欺事件

事案の概要
被告人が、共犯者と共謀して、被害者から仮想通貨を、換金業者名義のウォレット(アドレス)に送信させる方法によってだまし取ったとされた詐欺事件。
被告人は上記仮想通貨送信後に、換金業者を訪れ、換金の申し込みを行い、現金を持ち帰った。
  
争点
被害者から仮想通貨をだましとる行為について、被告人が共犯者と共謀していたか否かが問題となった。
 
審理の内容
共犯者3名の被告人質問や証人尋問等が行われた。
被告人と共犯者らとの会話は、通信傍受により録音されており、録音データを反訳した書面が証拠として採用され、取調べられた。
 
弁護活動のポイント         
共犯者のうち2名は被告人と同様の主張をしており、併合して審理がされた。被告人にとって有利な供述を共犯者の被告人質問において引き出す尋問を行った。共犯者らは、被告人は、換金役が用意できなくなるというトラブルが発生したため、急遽換金業者での換金を担当することとなったのであり、仮想通貨がウォレットに送信された後に、本件に関与することになったと述べた。これに対し検察官は、被告人と共犯者らは密接な関係にあり、被告人が本件を事前にきいていなかったはずがないと主張していたので、弁論では検察官の主張には飛躍があることを指摘した。
 また、通信傍受の録音データに記録されていたのは、断片的な会話であり、直ちに詐欺の事前共謀を裏付けるものではないこと、被告人が、被害者から仮想通貨を騙し取る詐欺が終了した後に本件に関与していたとしても、会話の内容とは矛盾しないことを主張した。
  

判決の内容
上記詐欺について、被告人は無罪。なお別事件について被告人は有罪となったため、結論は一部無罪であった。
共犯者の供述するところによっても、被告人は本件詐欺実行のあとに急遽換金役に当てられたものであり、その他関係証拠をみても、被告人が実行前に本件詐欺に関与していたことを具体的に示すものはない。検察官は、被告人が共犯者の舎弟であり、同居していたこと等から、本件詐欺の計画が事前に説明されていたと推認できるとするが、このような人間関係があるからといって、事前に計画を説明するはずであるなどとはいえない。通信傍受の内容は、被告人が本件詐欺実行後にその存在を理解したものとしても矛盾しない内容であり、共謀の裏付けとはならない。

判決日
令和2年8月14日
  
その他備考
被告人も検察官も控訴せず、確定した